蓋然性合理主義的スペクトル

意識低い系社会人による日常を彩るTips

君の名は。【レビュー】

 

 

さて、少し前ですが新海誠監督の「君の名は。」を見てきたので感想でも書こうかと思います。

偉そうな上から目線のコメントが多いかと思いますが、ご了承下さい。

 

 

 

 

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以下、ネタバレ注意

 

 

 

 

私の中での新海誠

 

本題に入る前に、新海誠監督(以下、新海さん)のことを書きます。

 

 

新海作品に初めて触れたのは、秒速5センチメートルでした。

言わずとしてた代表作ですね。

 

 

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【作品紹介】

“どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。”

 

互いに惹かれ合っていた貴樹と明里は、

貴樹の転校により、離れ離れになってしまう。

 

幼いころ2人で見たさくら。

いつかまた同じようにさくらが見れると、幼い2人は信じていた。

 

時の流れは残酷で、惹かれ合っていたはずの2人の心は、

少しづつ、でも確実に遠ざかっていた。

 

中学、高校、成人と流れ行く時の中で、

2人の心の変化を、鮮やかに描いた作品。

 

 

 

 

 

 

 

内容を一言で言うのであれば、

 

山崎まさよしの曲の壮大なPVです(褒め言葉)。

 

 

思春期の少年少女の行き場のない想いと、

手の届かない恋のもどかしさを鮮明に描いた作品といえるでしょう。

 

 

わたしはこの作品で新海作品に興味を持って、

ほしのこえ雲のむこう、約束の場所観ました。

 

 

ちょっと内容はうろ覚えなので解説は出来ませんが…

じゃあレビューするなよ

秒速と同じように、どことなく切なく、喪失感がある作品だった記憶があります。

 

 

 

秒速に次いで有名な作品がこちら、言の葉の庭です。

 

 

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【作品紹介】

“まるで、世界の秘密そのものみたいに彼女は見える”

 

靴職人を目指す高校生タカオは、

ある雨の日に昼間からビールを飲んでいる不思議な女性ユキノに出逢う。

その日以来タカオとユキノの雨の日だけの不思議な交流が始まる。

 

靴職人になる夢をユキノに語ったタカオは、

ユキノのために靴を作ることを決心する。

 

梅雨が明け、徐々に交流が減る2人であったが、

そんなときタカオはユキノのある秘密を知ることになる…。

 

遠く描いた夢と届かない恋、

そして何かが少し足りない2人を淑やかに描いた作品。

 

 

 

 

 

 

もどかしい独特の雰囲気があって、個人的には大好きな作品です。

星を追う子ども」なんてなかった。

ちなみにユキノは「君の名は。」にカメオ出演しています。 

言の葉の庭」が1番好きな私は最大の盛り上がりポイントでした。

 

 

 

 

 

新海作品の特徴

 

さてこれまで紹介してきた新海作品には、

大きな特徴、新海作品の色とも言えるものがあります。

 

 

①人物の顔の描写が下手

「秒速」でも「言の葉の庭」でも

登場人物の顔には特徴がないという特徴があります。

かつ皆、無表情なんですね。

 

何故かと言うと新海さんは人の顔を書くのが(多分)苦手なんだと思います。

ほしのこえ」とかの頃はマジで皆、同じ顔に見えます。

 

 

②モノローグが多い

表情で心理をかき分けるのが苦手なためか、

新海作品には登場人物(主に主役)のモノローグが非常に多いです。

 

モノローグが一切ない代わりに、登場人物が表情豊かなジブリ作品とは、

ある意味対照的ですね。

 

 

③情景描写が多い

これも人を書くのが苦手な反動で、

作中での風景のカットが非常に多いです。

 

「秒速」なんかだと駅のトレスシーンが特徴的ですし、

言の葉の庭」も雨の新宿御苑を遠くから抜いたシーンが多いです。

 

新海作品は情景描写のカットを利用した演出が非常に上手で、

昔から新海作品を知っている人だと、

新海=背景という認識を持っている人も多いかと思います。

 

 

④バッドエンドが多い

新海作品では絵コンテも脚本も監督も、全部新海さん1人でこなしていました。

なので新海作品では脚本にも少し癖があり、バッドエンドが多いと言われています。

 

実際、手の届かない恋やすれ違う想いを描いた作品が多いですね。

 

また山場やタメが少なく、淡々と進むストーリーが多いといえます。

 

 

 

 

 

 

新海作品の新境地「君の名は」

 

さてこれらの特徴を踏まえた上で、

君の名は。」を観ると少し違和感があるんですね。

 

 

① キャラクターが表情豊か

今作から(正確にはZ会のCMから)、

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」や

あの夏で待ってる」、「心が叫びたがってるんだ。」の

キャラクターデザインで知られる田中将賀さんが参加しています。

 

そのおかげかキャラクター達が魅力的で表情豊かです。

入れ替わりであくせくするシーンや、山で時を超えて邂逅するシーンでは

キャラクターの表情から心境が伝わってきますね。

新海作品らしくないです。

 

 

②モノローグが少ない

作中でモノローグが入るのは、

入れ替わりがなくなり、二葉の面影を追いかけるシーンのみ(多分)で、

困惑や焦りをモノローグで効果的に描写できています。

 

この点もこれまでの新海作品と一線を画しています。

 

 

③情景描写が多い

この点はこれまでの新海作品同様ですね。

山奥の秘境と都会の喧騒の対比を、

持ち前の風景描写で技巧的に描いていると言えます。

 

後にも述べますが、脚本の粗さを情景描写の巧みさと演出で上手くカバーしており、

全体として良い作品に仕上がっているという印象です。

 

 

④脚本が粗い

色んな方がレビューしているように脚本の粗さは私も気になりました。

やはりひとえに新海さんが得意としている類のストーリーと解離が有るためでしょうか?

 

例えば、

・3年もずれてたら気づくだろ

・記憶が曖昧なのは良いが、記録(ノートのメモやスマホの日記)が消えるのはおかしい

・入れ替わりについて分析しておいて、なんで相手がどこに住んでいるか知らないの?

・改変前の世界線では、彗星で村が消える厄災が発生しているのに、彗星を楽しみにしているみたいな社会的な風潮あるのおかしくない?

組紐が分裂しているがSF的に問題ないのか?

・村を救ってしまったのにバタフライ・エフェクトは生じない?

等々、気になる点はいくつもありました。

 

1回しか観てないし、小説も未読なので私の誤解もあるかもしれません。

 

ただいずれもタイムリープもののSFとして作品を捉える場合に生じる疑問でして、

ファンタジー作品としてこの辺の設定をぼんやり捉えれば、

それほど大きな矛盾にはならない気がします。

 

いずれにせよ、そんなプロットの粗さを感じさせないほど、

作画、音楽、演出が素晴らしかったというのも事実です。

 

 

 

 

 

 

 

感想

 

色々ネガティブなことばかり言っておいてあれですが、

やはり月並みな表現ですが面白かったです。

 

 

“入れ替わり”タイムリープで恋人を救う”というありふれた設定を

組み合わせたというのも非常にユニークだと思いました。

 

 

3年のずれも叙述トリックっぽくて好きです。

それこそ叙述トリックのように、

“本人たちは気づいているけど、視聴者は気づきにくい”

みたいな構成にできなかったのだろうかとも思いました。

貫井徳郎さんの「慟哭」的な感じ?

↑ネタバレ注意につき要反転↑

 

 

ただやはりもやっとする部分が残り、褒めちぎれないのも事実です。

 

 

あとひねくれたオタクである私的には、

リア充が好きそうな内容とはいえ)新海さんらしくない作品で、

ここまで人気が出るのは少し寂しいというか釈然としない部分は残ります。

 

ICOみたいな奇抜な設定で今後に期待していたファンタジー作品が早々に打ち切られ、

テンプレ王道ラブコメで話題になったジャンプの某マンガ家みたいな感じです。

 

 

もうひとつ流行りものには穿った見方しかできない心の汚い私的には、

(パリピが好きそうな内容とはいえ)作品のクオリティの割には

話題になりすぎてる感が拭いきれず、

広告の影響力ってすごいなーという感想を持ちました。

 

 

以上です。雑駁な内容ですいません。

なんかあんまり内容に触れていないですね。